チームジャージを品評したいじゃない2021
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欧州自転車ロードレースのその年のチームジャージを取り上げて気ままに賞をあげる恒例企画も今年で6年目。昨年は新型コロナの影響で各レースがそれぞれの決断で開催されたり断念されたりした。秋が来て状況がさらに悪化する中、新デザインどころではないかなと思ったけどそんなことはなく、今年のジャージ発表は例年に比べて話題になるものが多いほどだった。盛り上げて行こうという気持ちが高まっているんだろう。よっしゃ、盛り上がっていこう!
ということで今回は悩みに悩んで、大きく話題になったものと自分が調べたいなと思ったこの4チームだ!
【I’m lovin’ itで賞】
AG2Rはフランスのチームで、長い間スポンサーである保険会社「AG2R La Mondiale」のロゴである茶色と水色を基調としたチームジャージで通してきた。その茶色や水色の持つ優しいニュアンスがベースなせいか、長く優雅でまったりとした印象が強かった。ところが今年は革命が起きた。赤い。赤いわ。新しくスポンサーに入った自動車メーカー「Citroën(シトロエン)」の文字が赤文字でザクーッと襷掛けに入り、それを「AG2R La Mondiale」の茶色い文字が挟んでいる。赤はシトロエンのイメージカラーでもないはずだがなぜ・・・。
今回のデザインについて言及している動画を意訳して繋げると、
「元々AG2Rの名前は長く、ジャージにしても目立たなかったため、そのロゴをパターン化したものをあしらっていた。/ シトロエンとAG2Rという2つのフランスの企業が結びつき、フランスの色をまとい世界を走ることに我々はうっとりした。/ デザインには5ヶ月かかった。/この二社のアライアンスを表現するには、2つのロゴが一緒になっているのが何よりだ。/ シトロエンは常にそのコードを壊して大胆な製品を打ち出してきた。チームジャージはその大胆さのショーケースと言える。/ 100もの案を出し、一つのとても面白く興味深いタイポグラフィデザイン案を見出した。長い名前をいいように扱うことは難しかったが、斜めにあしらうことで大胆さをも表した。」
なるほど・・・ジャージの下地の白とAG2Rのロゴの水色とこの赤でトリコロールというわけなのかな。そして同時に赤でその大胆さや強さを表現しているということなんだろうか。深い(わからん)。
さて、こんな想いの詰まったジャージが発表された瞬間、SNSではその話題で持ちきり!そこで貼られた写真に全てが語られていて思わず吹き出した。
— La Flamme Rouge (@laflammerouge16) December 17, 2020
「大胆に」「目立つように」を追求すると、見慣れたアレみたいな大衆化されたポップアートのようになるという・・・だからI’m lovin’ it!
AG2R CITROËN TEAM : Genèse d'un maillot
https://youtu.be/OB2mL4cpS70
【狼化が止まらない!で賞】
今年はクイックステップのブランドカラーの青を上半身に持ってきて、全身を同系色でまとめ上げた一見地味なジャージ。よーく見ると上の明るめの青の部分、実は狼ヘアー模様なのだ。この模様は昨年からインスタなどの広報の時によく使われていたがまさかジャージになるなんて。青から濃紺への切り替えは去年のままにウルフパックのロゴのラインが入っている。
年々狼に近づいてくジャージに「ウルフパックウルフパックと言って走っているうちに本当に毛が生えてきたよ」なんてジョークを言う仲の良いチームの姿が浮かんでくる。カブどんもこの暖かいファミリーの中でまた力を取り戻して楽しく走って欲しいと思う。
【なんか言ってやらなきゃ気がすまないんで賞】
シーズン間近になっても一向に発表がなく、cyclingnewsはしびれを切らして今シーズンのジャージランキング記事を出してしまった。自分も他の記事は書き終え、EFを待ってじりじりとしていた。毎回ロードレースファンを騒然とさせてくれる話題をもたらすRapha × EFに、今回は何をやってくれるのかと期待が高まっていた。そしてようやく・・・
「From the world’s least compliant jersey, to the world’s most compliant jersey.」
世界で最もいいなりにならないジャージ・・・2019年には発表を引きずって黒いジャージを作ったり、昨年には未申請のアヒルジャージで違反を取られたことを言ってるらしい。世界で最も従順なジャージ・・・そう、各スポンサーロゴのレギュレーションのために引いたガイド線や数値やメモをデザインとして使い「当方、ルール守る気あります。ご心配なく!」と宣言しているようなのだ。
遠くからは普通のジャージ、よくよく見るとチームからそんなUCIへのメッセージが浮かんでくる。一見オールドスタイルに見えるが、スポンサーロゴに線を入れてしまうところは「破天荒でやんちゃなところは変えないよ」と逆に主張しているようだ。そんなひねくれたところにはニヤリ。他にもNIPPOのミッチーくんがちょこんと配置されてたり、アーガイルが首元にあったりとニヤリポイントは多い。増えてごちゃごちゃしてしまうスポンサーロゴを同系色にまとめて混沌の中で模様のようにしてしまったところはテクニカルでもある。でも、そういう面では今年のB&B HOTELS(旧Vital Concept)の方がうまいんだよなぁ。
昨年はジャージの注目だけではなく、いい結果も残してチームとしては上り調子。この調子でクレイジーだけど強い、そんなかっこいいチームを目指して欲しい。
Designed to disrupt, created to comply
https://www.efprocycling.com/designed-to-disrupt-created-to-comply/
【カチューシャよ今度こそほんとに永遠にで賞】
Team KATUSHAだった頃生まれたKATUSHA Sportsというサイクルアパレルメーカーが、昨年までISN(Israel Start-Up Nation)のジャージの供給をしていた。今年はJingaというイスラエルのスポーツアパレルメーカーが選ばれることになり、完全にカチューシャはロードレースのジャージからその名を消すこととなった。Jingaは昨年もプロコンチのIsrael Cycling Academyにジャージを供給している実績があり、イスラエルとしても最先端の技術を提供できるスポーツアパレルメーカーがあることをいよいよ世界に宣伝したいというのはもっともな話だ。果たして、アパレルブランドとして残すほどに技術やグラフィックデザイン力があるKATUSHA Sportsを外してどうなったのか・・・
FACTERのフレームの新しさのあるグラフィックに対し、ジャージはトラディショナルなものになった。フルームというレジェンドが入ってどうなるのか期待がかかるISN、ここは革新的に行きたいところなのもわかるし敢えて落ち着いて見せるというのもわかる。どちらがこのチームに合うのか、今シーズンの展開が楽しみだ。
http://israelcyclingacademy.com/the-chosen-one-israeli-custom-apparel-company-jinga-to-supply-isn-with-team-kit-for-2021/
以上!
他にいいなと思ったB&B HOTELS(旧Vital Concept)、INEOS Grenadier、Bahrain Victoriousのことをざっと。
B&B HOTELSは昨年よりもグラフィックを全面にこれまでのモチーフや新しいモチーフをランダムに組み合わせていてダイナミックで素敵。スポンサー名も馴染むように馴染みすぎないようにという合わせ方がうまい。
INEOSは昨年のツールからGrenadierがスポンサーとして入り、赤のグラデジャージから変更。どうしてもAqua Blue Sportを重ねてしまうけど、シックで昔のスカイみたいに強そうなのがいい。
Bahrain Victoriousはマクラーレンがいなくなっていまいちなデザインになるかと思ったけど、モチーフを使ったグラデーションが新鮮でなかなか美しい。昨年のジャージのスマートさを取り入れつつ独自の進化を遂げている。
や〜盛りだくさんになってしまった。
今年もロードレース盛り上がっていきましょう!
written by C.K