ツールド三陸2016ー当日

9/25 26°C19°C

気仙沼駅でBRTに乗り過ごす

大会の朝、気仙沼駅から1キロの宿をとった我々は前日大会受付に間に合わない失態をしていたこともあり4:30に起きた。

自転車で駅まで行き、駅前で6:30発の陸前高田までのBRTに乗るために自転車を解体して輪行袋に入れる。
さぁ!と駅に入ると乗り遅れていた…。
早起きして万全を尽くしたつもりが、途中から時計を見てない我々だった。

参加する健脚Bコースの出走時間は8:15。次のBRTは7:30陸前高田までは40分。
間に合わない!
大会事務局に電話をすると、スタート時間が過ぎても受付できるようにしてくださるとのことでとにかく会場に向かうことに。

陸前高田駅着そしてスタート

会場はBRT陸前高田駅のすぐそば。
急いで受付をして閑散としたスタートゲートで係りの人に説明をすると、事務局に確認をとってスタートさせてくれた。

しかし12分の遅れ…コンタドールでもさじを投げるレベルだ。
「スタートできるけど、道案内もエイドもないかもしれないよ。」
という言葉や、地図をメカに入れていたものの道を間違えて思うように進めず、すっかり投げやりになって走っていた。

そんなところに「がんばって」と、
沿道に1人で立っていた女の方が小さく声をかけてくれた。
その瞬間、私はすごく自分が恥ずかしくなって最後までがんばろうと思った。

全コース共通の道の坂のところを走っていると、後ろからゴリゴリと別府史之選手が上がってきて抜いて行った。
度肝を抜かれて慌てながら「ブエルタ見ました、かっこいかったですー!」と、はるか後ろから叫ぶと手を上げて応えてくれた。

第一エイドの碁石海岸着

すっかりホクホク気分で第一エイドに到着。
別府選手がメカ調整をしていて、たくさんの参加者が休憩をとっていた。
碁石海岸を見晴らせる展望台がある。他の参加者に会えてホッとしたが、あまりゆっくりもできないのでエイドのナゲットをほうばりながら林の間から海を眺めた。戻ると別府選手がみんなと写真を撮ったりしていたので、私も一緒に撮ってもらった。 さらに元気になってスタートだ!

そこからはインターバルトレーニングみたいな道が続く。
よちよちと坂を上っては、勢い良く坂を下る。坂を越える度に左手に港が見えた。
美しい海、牡蠣の養殖棚、陸には身長の3倍はある防波堤が建設中だ。

途中の上りで沿道から「冷たいお茶でも飲んで休憩しませんか?」とお声がけいただいて立ち止まった。
すでにアクマさんがいておばあちゃんにいたく気に入られている様子だった。
おじいちゃんが素敵な自転車のネックレスをしていたので、「素敵ですね、どうしたんですか?」と聞くと自転車が好きなのでご自分で作られたそうだ。ご自分でも息子さんのマウンテンバイクに乗っていたのだが膝を痛めて今は乗っていないそう。
アクマさんとしゃべっていたおばあちゃんは93歳でとてもお元気そうだった。
みなさんと写真を撮ってもらって出発。
来年も参加したらまた会えるだろうかとそんなことが嬉しくなってしまう。

沿道で見守ってくれているみなさんやそうでないみなさん、どのかたにもあいさつをして走った。
普段手を離して走れないのだが、がんばってできるだけ手も振った。
私が真っ黒なネックウォーマーで顔を隠しているのを茶化すようにジェスチャーしてたおじさんの笑顔、私も笑って応えた。
誰もいない中走るんだろうと思っていたからみなさんの笑顔が本当に嬉しかったのだ。

第二エイドの広田漁港着

エイドのテントには夢のような光景が。
炊き込み御飯のおにぎりに蒸し牡蠣、いろんな餡が入ったお焼き...これいただいていいんですか?
ウキウキとそれぞれをもらって港側に出た。大きな流木が積まれているところで海を見ながら豪華なエイドを味わう。
おにぎりはふっくらしてまだ作りたてのぬくもり、蒸し牡蠣は張りがあって味が濃く、かぼちゃ餡とあんこを選んだお焼きはもちもちした皮がたまらない、なんて贅沢なエイドなんだ!
牡蠣もおにぎりもお代わりをいただいたので何度もお礼をいいながらエイドを後にした。

まさかのリタイアの危機

なんだかんだと残り8kmの地点までやってきて、最大級のトラブルに見舞われる。
ダラダラとした坂をよちよち登っていると突然ペダルがひっかかる感触があり、そのまま立ちごけてしまったのだ。
ちょうど後ろを走っていたツールド三陸のスタッフお兄さん(年齢不詳、自転車YONEX)が私のケガや自転車の状態を見てくださり、後からきたスタッフさんと救護スタッフさんを呼んでくれた。
自転車はチェーンの一部が曲がってしまっていてディレイラーのところで引っかかってしまうのが原因ということがわかり、チェーン切りもなかったのでこれはもう走れないねということになった。

「ゴールはしたいので自転車を押して行く。」
意地かヤケか私はそう言って聞かなかった。じゃあがんばろうということで、私と連れは歩道を自転車を押して歩き出した。 YONEXさんは「この先にケーキ屋があるからちょっと行ってくるよ。」と行ってしまった。
しばらく坂を上ったところで、YONEXさんが坂を下りて戻って来た。
「ケーキ屋が休みだったんだよー。」
このYONEXさん、独特ないいキャラである。
その代わりにと言いながら、坂を登りきったちょっと先に自動車の整備工場があったので自転車を直せるか頼んできてくれたのだ!
どうにかなるかもしれないと、希望がわいてきた。

復活、そしてついにゴール!

ブリヂストン、建物にそう書いてあるのが見えた。私のアンカーを呼んだのか。
YONEXさんもついてきてくれて、おじさんにお願いをするとどれどれとチェーンを切ってくださることに!
自転車を古タイヤの上に寝かせてチェーンのジョイントだけを電気やすりで器用に削って取り除いてくれた。持ってきていたジョイントを取り付けると修理が完了した!
「なんとお礼を言ったら良いか...」とおじさんが提示した微々たる修理代をお支払いして、ペコペコとお礼をしながらコースに戻った。

私たちはまたもや最後になっていたので、YONEXさんが一緒に走ってペースメーカーをしてくれた。
「下り坂は下り切らないうちに踏み始めると上りで失速しない。辛くなる前にギアを変える!」等、横でスパルタな教えをいただきながらゴールを目指す。
前の集団に追いついたが、「行けるなら、もっと先に行っちゃっていいよ!」との言葉にとにかく踏みまくってさらに先を目指した。
「ケイデンスを無駄にあげているからギアを少し重くして、ケイデンスは一定に...」
その通りだったのですでに出し切ったようになっていた私だったが、YONEXさんの教えは続く。
さらにゴールまでに二つの坂をクリアして、カスッカスになりながらゴール!
ゴール後、YONEXさんに言い切れないお礼を言って握手をした。

「プレゼントがあるんだ。」
とYONEXさんはジャージの腹からごそごそと、連れが気づかずコースに落としたベストを取り出した。
Oh, our true legend...

完走証をいただいて、会場の出店でかき氷を買う。
かき氷がこんなに美味しく食べれたのは子どもの頃以来じゃないか?
完走証には「ありがとう」とあった。
ゴールして頭をいっぱいにしていた言葉がその言葉だった。
こちらこそありがとうだと思った。

夢中でかき氷を食べているとマイレジェンドが通りかかって
「食べとき、食べとき」と言って通りすぎて行った。

前日の気仙沼入りのお話はこちら

written by C.K